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  • 「企業間関係と企業規模」

    Abstract

    本稿では日本の法人企業約 82 万社(全法人企業の約 3 分の 1)をカバーするデータセットを用いて,企業の資本・取引関係数が企業規模とどのように関係するかを調べた。第 1 に,企業の資本・取引関係数の分布はロングテールである。資本・取引関係数の多い企業の上位 1%がもつ関係数は全関係数の約 50%であり,偏在している。第 2 に,取引関係数が多いハブ企業だけを取り出しその相互関係をみると,一部の超ハブ企業に関係数が集中しており,偏在が一層顕著である。第 3 に,企業規模が大きいほど関係数は多く全体として両者は比例関係にある。しかし既に多くの関係をもつ企業では,規模が拡大するほどには関係数を増やしていない。これは関係の維持コストを企業が節約しているためと解釈できる。

    Introduction

    企業活動は様々な相互関係性の上に成り立っている。第 1 は物流である。企業は素原材料を川上の企業から購入する一方,生産物を川下の企業に対して中間投入として販売したり,流通企業に対して最終財として販売したりする。第 2 に,物流はしばしば企業間の与信関係を伴う。商品取引の決済時点を遅らせるために手形が発行されるのはその代表例であるが,より一般的に,商品の受渡しと資金の受渡しのタイミングがずれればそこに企業間の与信が発生する。さらに企業間与信が銀行与信に置き換えられることも少なくない。第3 は資本関係である。親会社が子会社を作るというだけでなく,物流で密接な関係にある企業が資本関係を結ぶことも少なくない。第 4 は役員派遣などの人的な交流である。

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