Yoko Konishi ワーキングペーパー一覧に戻る

  • 「ランクサイズ回帰の検定について」

    Abstract

    多くの実証研究では都市サイズ,企業の資産や売上高の規模などの研究対象がパレート性を持つことを,ランクサイズ回帰で観察してきた.具体的には,順位の対数値をその規模の対数値に回帰することにより,その係数が-1 になるかを調べる.また,パレート性の有無には,二次項の係数が 0 であることも条件になるので,本稿では,二次項を加えたものを回帰モデルとする.パレート性の検証には,一次項,二次項それぞれの t 検定と,一次項の係数が-1,二次項の係数が 0 という複合仮説が成立しているかを F 検定で調べる方法がある.しかし,分析対象がパレート分布に従う時,データ数が大きくなると,t 値は発散してしまうため通常のt 検定を行えないことがわかっており,F 検定でも同様の問題が観察された.そこで本稿では,F 値の棄却域をシミュレーションによって構成し,ランクサイズ回帰の複合仮説を検証可能とし,パレート性の検定の新たな手法として提案した.

    Introduction

    都市・地域経済学でランクサイズ回帰のあてはまりがよく,古くから応用されている分野に都市人口分布の分析がある.まず一国の都市の人口を大きい順に並べ替え,1 位,2 位 . . . と順位(ランク)をつける.ランクサイズ回帰とは,都市の人口規模の対数値を当該都市の順位(ランク) の対数値に回帰したものである.すると,多くの国において定数項がほぼサンプルサイズの対数に等しく,傾きはほぼ −1 に等しくなるという結果が得られる.つまり人口規模が1 番大きい都市から順に 2 番目の都市は 1/2 の人口,3 番目は 1/3,. . . と減少していく.Si,i = 1, . . . , n をある国の都市 i の人口とし,S(i) をそれを大きい順に並べ替えた順序統計量とする.つまり S(1) ≥ S(2) ≥ . . . ≥ S(n) である.

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